「君が」


「ユッキー、何で髪の毛、切ってまったん?」

前から思ってた。
折角あんなに長かったのに、勿体無い。
訊いてみたら、ユッキーは少し悩んで。

「…やっぱ変?」

そう答えた。
俺は焦って、

「や、似合ってるけど」

すぐさま答える。
なのにユッキーは俺の顔を見て言った。

「けど、何?」

くすり、と笑ってる。
俺は返事に困ってしまう。
だって、なんだか言いづらいもん。勿体無い、なんて。
黙り込んだらユッキーがゆった。

「hyde君のことだし。どーせ勿体無い、とか思ってんでしょ」

ずばり言われました。
ユッキー、あなた、心でも読めちゃうんですか。
心の中でそっとツッコミを入れてから頷く。

「…うん、そのとーりです」

するとユッキーは、ひとつ小さく溜息を吐いてから小声で呟いた。

「…願掛け」

願掛け? ユキヒロさん、それはまた可愛らしい事を。
まぁ可愛いなんてゆったら怒られそうやしなー。

「ね、お願い事、なんだったん?」

訊ねると、ユッキーはぽつり、と言っても良いのかなー、なんて呟く。
俺は聞きたかったから、えぇよ、ゆってみ、とか言って、言わせるように促した。
その返事は。

「hyde君が俺の夢を見てくれますように」

…何、そのちっぽけなお願い。
俺が、ユッキーの夢?

「何で、そんな…」

「いや、一応理由はありますが」

ユッキーは言ってからずっと俯いたまま。
よくよく見ると耳が赤い気がするけどそれはスルーすることにしてあげた。
それより、理由って何なん?
めっちゃ知りたい。
だってユッキーがこんな可愛らしい事ゆうなんてありえへんもん。
今のうちに、いっぱい聞いておきたい。

「理由って、何?」

「……」

ユキヒロさん。
無視しないでくださいな。

「ユッキー…」

「ユーキヒーロさーん」

「……」

あまりにもユッキーが反応を示さないから。
俺は、その場に座り込んで、俯いてみた。

ユッキーは少し顔を上げる。
俺は気付かないふりをしてそのまま押し黙る。
顔を手で覆い隠して、ぴくりとも動かずに。
すると。

「わかったから、顔上げて」

溜息交じりの声が聞こえた。

「…教えて、くれる?」

ぽつりと呟いたように訊いてみる。

「うん、教えるから」

「ほんまに?」

「ほんとうだから」

「絶対?」

「絶対」

やった。
でも此処で嬉しそうな顔したらあかんやろな。
怒られるよな。
お仕置き、されてまうやんな。

「…じゃ、聞かせて」

あくまでも、悲しそうな声で。
あぁ、俺って演技派?
心の中ではわくわくしてる。
だけど、それを表には出さずにユッキーを見つめた。

「えー…と、ですね」

「実は」

「hyde君、寝てるとき、俺の家に居ようが関係なく、寝言で見事に俺以外の人の名前を呼ぶわけで」

…嘘ー。

「え、それ、ほんまに?」

「ほんとうです」

「だってユッキー、そんなん全然ゆってくれへんかったやん…」

「そんな女々しい事自分から言えるかって話です」

やばい。
俺、めっちゃ酷いことしてるやん。




ん?

でも、髪の毛、切ったってこと、は。

「…俺、じゃあ、最近ユッキーの名前、寝言で呼んだ?」

「一応」

うわー。
恥ずかしい。
何でそんなん聞いてんの。
もうずっと伸ばしてろよ。
ギネスに挑戦しなよ。

恥ずかしさの余り、かなり無礼なことを考えつつ、俺が何を言ったのか訊ねる。
俺、何てゆったん?

「えーと…。確か、『ユッキー、ごめんなさい』って言われた」

あーあ。
やってもーた。
めっちゃ失礼や。
ハズカシイの次はシツレイですか。
どんだけ俺はアホやねん。

「…ごめんなさい」

「何が」

「…初めてユッキーに関する寝言が『ごめんなさい』でごめんなさい」

「…まぁ、確かにちょっと『は?』って思ったけど」

「…ごめんなさい…」

しゅんと項垂れると、ユッキーはよしよしと頭を撫でてくれた。



どうでもいいことですが。
俺、この前kenちゃんに怒られたんです。

「お前俺の腕枕で寝てるのにユッキーの名前寝言で呼ぶのやめなさい。しかも、告白とか」

…どうやら俺、タイミング悪いみたいやな。



End




hydeさん、ちょっとズレてます。
夢に出てくるキャストの選び方ズレすぎです。

一度、こうゆうユッキーを書きたかった。
妙に可愛いユッキーが書きたかった(笑)。
ユズキの書くユッキーは「俺様」なので。
神なので。

近々この小説の内容が少し関わる小説もアップします、きっと。
…何だかちょこちょこ出てくる敬語が好き(笑)。


2006.1.10...

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